未来解剖
SANKENが描く、未来予想図 VOL.2「ZEB」後編

2013年、「つくばみらい技術センター」で国内初の全館「ZEB」化を達成。
当時から「ZEB」の開発に携わってきた佐藤英樹氏が
「ZEB」をキーにして広がる設備施工の未来像について語ります!
VOL.2「ZEB」後編 〜建物全体をコーディネートする設備の未来〜
ZEB実現には建築(意匠・構造)、設備が一体となった連携/建築のコーディネーターとしての設備の役割/「ZEB」が作る未来
建築のコーディネーターとしての役割を担う設備
これまでの建築においては、意匠・構造・設備の役割がきっちりと分業化されていました。多くは、まず建物のデザインがあり、そこに構造や設備がつながっていくというイメージです。しかし、「ZEB」の計画においては、設備が建築設計・建物のデザインに積極的に関わることが欠かせないでしょう。エネルギーのパフォーマンスを上げるには、建物のデザインや形状、構造そのものもキーになるからです。それだけに、設備会社のノウハウや技術力がこれまで以上に必要とされます。
「ZEB」に関して言えば、私たちには10年以上の運用実績と蓄積されたデータがあります。設備的な観点から建築設計への要求事項も目指すZEBのレベルによって異なります。遠くない未来、設備が建物全体のコーディネーター的な役割を担うことが増えていくと思います。個人的にも、そのようなプロジェクトに携わると普段とは違う業務に出会えるのでわくわくしますし、竣工した際は大きな達成感を感じます。と同時に「これからきちんと運用していかなくては」というプレッシャーも感じますが…。
建築、設備が一体となって作る「ZEB」
国の掲げるカーボンニュートラル推進により、「ZEB」が“あたりまえの存在”になっていきます。建築と設備がそれぞれの専門性を活かした視点で意見を交わし、一丸となって1つの建物を作り上げていく取組みが欠かせないと考えています。つまり、建築、設備が一体となって同じ目標を持って協力しあって「ZEB」を作り上げるということです。
建設する場所の気候や自然環境を考慮し、エネルギー削減や快適性追求といった多角的視点で最適な建物のあり方を建築サイドへ提案するなど、建築設計と設備設計が連携し、総合的な判断による最適な計画が求められています。その結果、設備は最小限の高効率な機器を採用し大幅なエネルギー削減を実現しながらも心地よい建物とすることができます。
住みやすい世界のために、次世代へ「ZEB」というバトンを渡す
「ZEB」の最終目的は、今の子どもたちにとって住みやすい世界、良い環境を残すために何ができるかを考え、その実現に向けての取組みです。Z世代以下の人たちは地球が抱えている環境問題や課題について、学校の学びを通じて理解を深めていると思います。「ZEB」が特別なものではなく、水道や電気、ガスといったインラフと同じように“あたりまえの存在”になることを期待しています。
そして、私たちは次世代に良い形でバトンを渡せるよう、常に“十歩先の未来”を見据えて、これからも「ZEB」はもちろん、カーボンニュートラル社会の実現に向けてさまざまな課題に取り組んでいきたいと考えています。
